福島原発事故 放射線予測・計算所

福島原発事故による放射線量と放射線被爆量を計算します。


長期的な見通しについて

避難をしている方や、近隣の方々にとってもっとも気になるのはこれから線量は長期的にみてどうなっていくのか?避難はいつまで続くのかということだと思います。いくつか例で載せた線量変化予測のグラフを見れば分かるように、 汚染物質が拡散されない限りこの先線量は高止まりの状況が続きます。 これは前にも書きましたが、半減期の短いヨウ素の崩壊が終わり、残っているのは半減期の長いセシウム134とセシウム137のためこれがベースとなってやっかいな放射線を発生しているからです。

浪江町津島沖仲での線量変化予想グラフ

上の図は地点31(西北西31km、浪江町津島仲沖)の線量予想グラフです。横軸は時間で単位は年、縦軸は線量で単位はμSVです。日本では高くても0.1μSV/hぐらいですから、その基準の150倍くらいの線量がこれからも予想されるわけです。ただ、何度もいいますがこの値は汚染物質がその場にとどまり続けた場合という仮定に基づいています。 実際は例えば長崎・広島の町は原爆から復興し、現在は安全なように、 長期的にみれば拡散し線量も低下するかもしれません。(今回の事故では保安院の控えめな評価でさえ、長崎・広島原爆のおよそ80倍の放射能が撒き散らされました。・・・*1)しかし拡散してくれることの期待がある一方で、モニタリングデータの分析をしている限りでは、観測線量がほとんどグラフ通りに推移していることから、セシウムの土壌への定着がかなりあるのも事実だと思います。 グラフを見て分かることはこの先1年間経っても線量はほとんど下がりません。黒が全体の線量変化、そのうち青がヨウ素131からの分、緑はセシウム134の分、赤はセシウム137からの分です。セシウムの放射線が長期的にいつまでも残り続けることが分かります。もう少し先を見ていきます。

10年後までの浪江町津島沖仲の線量変化予想グラフ

10年のスパンで見ると、線量が下がるペースはゆっくりしており、しかも主にはセシウム134の崩壊で線量が低下することが分かります。 10年経っても線量のレベルは1年後の半分程度です。今回原発が引き起こした事故がいかに深刻で、大変な出来事かこのグラフを見るだけでも分かると思います。この浪江町でデータ予想値を見ると、10年後も日本の平均の約60倍の線量が記録されるということです。この長期的な予測はセシウム134とセシウム137の放出ベクレル比に依存します。もし、私の見通しより放出されたセシウム134の割合が高いならもう少し減衰は早く進みます。もしセシウム137の割合が高いなら線量の減衰はなかなか進みません。 30年経たないと戻れないどうのという指摘がありますが、参考までに30年後までのグラフを載せます。

30年後までの浪江町の線量変化予想グラフ

このように、事故後10年以後はセシウム134はほとんど崩壊し、残るのはセシウム137だけになります。しかし、このセシウム137の半減期は30年ですから、ほとんど下がりません。 もしセシウム137が汚染された場所に定着し続けるとすれば、 30年経ってもこの浪江町の線量は基準(0.1μSV/h)の30倍にもなります。こんな取り返しのつかないことになってしまい私たちは見つける言葉もありません。私たちの次の世代にどう説明すればいいのでしょうか?

*1・・・一般に100万kwの原子炉を1年間運転させると、広島・長崎の原爆の1000倍の放射能がたまるといわれています。
(炉内で一日原爆3発分のエネルギーを核分裂させている。)
原子炉内の燃料は平均すると2年間燃やしていますから、運転している100万kwの原子炉には
原爆2000倍の放射能があります。
今回事故を起こした福島原発1号機〜3号機の電気出力合計200万kw原子炉内には
原爆の約4000倍の放射能が蓄積されていました。
このうちどれだけの放射能が拡散してしまったか、推測するのは容易ではありませんが、
保安院の言っていること(ヨウ素・セシウム全体の放射能の2%が放出された)が適正な評価だったとしても、原爆80発分の
すさまじい環境汚染が引き起こされたことになります。
 


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