福島原発事故 放射線計算所

(福島原発事故による放射線量と放射線被爆量を計算します。)

 

この計算式をどのように作ったについての説明

 

まず、それぞれの放射性物質がどれだけ拡散したかを考えなければいけません。

I-131の放出量をBqCs-134の放出量をBqCs-137の放出量をBqとしI-131Cs-134、、Cs-137の半減期をt、uvとすると、

事故後(3/15)x年経ったとき残っている放射性物質のベクレル数をとおくと・・・

となります。これをそのまま放射線の変化にしてもいいのですが、厳密に言うとなりません。

なぜなら同じ1Bqの放射線源があっても、元素によってその放射線は強かったり弱かったりするからです。

それを考慮するためには放射性物質の崩壊エネルギーを考える必要があります。

崩壊エネルギーが2倍なら2倍の強さの放射線が出ているということですし、

崩壊エネルギーが0.5倍なら同じβ線でも放射線の強さは半分です。

I-131Cs-134Cs-137の崩壊エネルギーをそれぞれEaEbEcとすると・・・・

放射線の強さは残っているベクレル数にこの崩壊エネルギーをかければ、それが放射線の強さになります。

x年経ったときの放射能の強さをy(x)とすると・・・

となります。

とおくと

・・・αとなります。

この式が元になる式で、事故後x年経ったときのすべての地点における放射線量の変化の比を表しています。

(A,B,Cの具体的な算出方法については後に説明します。)x2号機爆発があった3/15からの時間()です。

これは震災後の放射能変化を分析すると、2号機爆発後の線量変化が桁違いに大きく、もっとも放出量があったときです。この時を0とするのが適切だからです。

AI-131の放出量×崩壊エネルギーに関するパラメーター

BCs-134の放出量×崩壊エネルギーに関するパラメーター

CCs-137の放出量×崩壊エネルギーに関するパラメーターです。

tI-131の半減期で8/365(8)

uCs-134の半減期で2.1年、vCs-137の半減期で30年です。

次に、自然放射線量と数値の補正をします。

ある地点で時間s(単位年)における測定値がk(単位μSV/hまたはmSV/h)、自然放射線量がn(単位μSV/hまたはmSV/h)のとき、(knの単位はそろえなければいけません)

この地点での放射線量の変化をP(x)とすると、どの地域も線量の比は式αに依存しますから・・・・

・・・@という、式が成り立ちます。

@式より、です。詳しくかくと・・

です。もう一度式とパラメーターについて述べると、P(x)は放射線量の変化です。

A・・・I-131の放出量×崩壊エネルギーに関するパラメーター

B・・・Cs-134の放出量×崩壊エネルギーに関するパラメーター

C・・Cs-137の放出量×崩壊エネルギーに関するパラメーター

 t・・・I-131の半減期(8)

 u・・・Cs-134の半減期2.1年     v・・・Cs-137の半減期30

 n・・・自然放射線(単位μSVまたはmSV/h)   

sk・・・ある地点で事故後s年経ったときの放射線の観測地がk(単位μSVまたはmSV/h)です。

(knの単位はそろえなければいけません)

このP(x)を積分してやれば被爆量になりますが、積分するときに注意が必要です。P(x)の時間の単位はμSV/hまたはmSV/hですから、積分する単位はhourでしなければいけません。

しかし、hourは短期的なスパンを考えるときはいいですが、量も多くなるので使いにくいです。そのため時間の単位をhourから年に変えるために置換積分をして、単位を入れ変えます。

事故後t1 (hour)からt2 (hour)までのその地点での被爆量は・・・

です。これを単位を変えて年にします。

x(hour)

    →  

h()

また

ここで式が見にくいですから、改めて

(単位年)とおくと

 

さらに見やすいようにhxとおきなおすと・・・

これを計算すると、事故後の時間p()からq()までの被爆線量になります。

これで、p=0q=xとすると、事故直後からの累積被爆量のグラフ式になりますし、

p=pq=xとすると、p()からの累積被爆線量になります。

この式は最適なパラメーターa,b,cを採用することで、とても精度の高い値を計算することができます。

しかし、やはり1点のみからのデータだけでは、測定上の誤差や天候などが原因で一時的に突出した値で計算すると、予想値が大きくばらつくときがあります。

そのため、測定値はなるだけ複数入力してもらい、出てきた値や式の平均を採用することで、さらに精度と信頼性を高めるようにしています。

では次にこのa,b,cをどのように決定したかを以下述べます。

 

a,b,cの決定の方法

a,b,cをどのように決定するかですが、文科省の線量モニタリングデータと土壌モニタリングデータから、放出ベクレル比を推定しました。

文科省発表の原発周辺の各地の土壌のモニタリングデータを調べると、それぞれの核種の半減期から、放出されて土壌に沈着した放射能のベクレル数を推測することができます。

私は原発の北方向(5ヶ所)、北西方向(7ヶ所)、西方向(5ヶ所)、南方向(4ヶ所)に分けて、それぞれの核種がどれくらいの比で拡散したかを計算しました。

その結果、北〜西方向の放射能の比はほぼ一致しましたが、南方向のそれはI-131Te-129mの比が北西方向とかなり違うことが分かりました。

おそらく北〜西方向は2号機爆発による放射能の拡散を受けており、

南方向は3号機爆発の影響を受けているのだと思います。下の表はそれぞれの放射能核種の放出ベクレル比です。

南方向は北西方向に比べ、高い割合のI-131Te-129mが放出したと推測されます。どの方向でもCs-137Cs-134の比はほとんど一致します。

1

I-131

Cs-134

Cs-137

Te-129m

Cs-136

Ag-110m

Sr-89

Sr-90

半減期

8

2.1

30.2

33.6

16

28

50.52

28.8

北〜西方向

10.9

0.87

1

1.21

0.103

0.02

0.01以下

0.0001以下

南方向

34.64

0.867

1

4.3

検出されず

検出されず

 

 

 

また放射線の強さはそれを発する放射性元素によって違います。

同じ1Bqの放射性物質があったとしても発生する放射線の強さは違います。

崩壊による線種の違い(α線、β線、γ線)や、同じ線種でも崩壊のエネルギーが違うためです。

1Bqとは1秒間に1回の原子崩壊が起こる放射能があるということですが、同じ1Bqでもそこから発生する放射線の強さはそれぞれこの崩壊エネルギーの違いを反映させることが必要です。

ここで、今考えている外部被曝に関してはα線、β線は考える必要はありません。(内部被曝では当然考えます。)

外部被曝を考えるときは地中や空中で透過力の高いγ線を考える必要があります。それぞれの放射能の放射線種と崩壊エネルギーをまとめました。単位(MeV)

2

I-131

Cs-134

Cs-137

Te-129m

Cs-136

Ag-110m

β崩壊

0.574

0.497

0.5513

1.6

0.5程度

0.53

γ崩壊

0.363

1.514

0.563

0.658

上の表のように、Te-129mCs-136はγ崩壊しませんので、外部被曝の評価式には入れません。

またAg-110mも放出量が少ない(Cs-13712%程度)ので、式で考える核種はI-131Cs-134Cs-1373つを考えることにしました。

式で採用した最終的な放出ベクレル比は、土壌モニタリング結果をふまえた表1の結果だけでなく、実際の放射線量との一致も考慮しています。

下の表3が式で採用したパラメーターの数値ですが、I-131の放出ベクレル比は30と表13倍にもなっています。これは実際の放射線量との一致を考えて決定した数値です。

2号機および3号機が爆発した直後は1週間ほどは非常に高い放射線量が観測されています。表1のベクレル数で式をたてても事故直後がうまく近似できません。

これは主な3つの放射能からの放射線以外にキセノン133(β崩壊)などの短半減期の核種からの放射線の影響がある他に、

土壌に定着しないで空気中を漂っているI-131の影響が大きいと考えられるからです。

I-131は土壌には少なくも比で10.3がありますが、実測線量との比較でその3倍の30を式のパラメーターに代入することにしました。

事故直後は土壌以外に、空気中にも土壌の倍のベクレル数があったと仮定したのです。この仮定が合っているのか断定できませんが、

このベクレル比のときが実測線量の推移とうまく近似されます。

3

I-131

Cs-134

Cs-137

放出ベクレル数@

a=30(南方向は60で計算)

b=0.87

c=1

γ崩壊エネルギーA

Ea=0.363

Eb=1.514

Ec=0.563

@×A

A=10.89

B=1.317

C=0.563

 

今から数々の機関から原発事故に対しての評価は発表されると思いますが、等サイトではデータを総合的に解析し、

事故で放出された放射能の量を次のように推測しています。放射能のベクレル数は比でしか分かりませんが、

Cs-137の量は保安院より辛い評価の安全委員会に合わせました。

事故の初期で出た保安院の過小評価の放出推定で見ても、莫大な放射能の拡散であり、事故のすさまじい被害です。

福島第1原発1号〜3号機計200kwの中には広島・長崎原爆の実に4000倍の放射能があったと推定され、

そのわずか1%の放出で事故をくい止めても、原爆の40倍の放出量です。

今回の事故が国の存続をも左右するといっても過言ではない被害が出るのは容易に予想されると思います。

 

 

I-131

Cs-134

Cs-137

Te-129m

Cs-136

Ag-110m

Sr-89

Sr-90

放射能計算所

36万テラ

1万440テラ

1万2000テラ

14000テラ

1200テラ

240テラ

120テラ以下

12テラ以下

保安院

13万テラ

発表無し

6100テラ

安全委員会

15万テラ

発表無し

12000テラ

 

 

 

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