文科省の年間被曝量データとサイトのそれとの違いについて
(国の積算被曝線量予想との比較と数字を見るときの注意について述べておきます。)

文部科学省のHPでも当然積算被曝線量予想は行っています。行っていますが2011年3月11日から1年間の積算被曝線量予想のみで、 2年後、3年後の予想については発表していません。(おそらく責任がもてないからでしょう)また計算過程にはいくつかの仮定があり、見る人はそこを知っておく必要があります。文科省では積算被曝を計算するときは、今まで実際に観測された積算線量に未来の予想被曝量を合わせます。そのとき最新の観測線量が来年の2012年3月11日まで続くという仮定の上に計算されています。例えば5月10日にある地点で10μSV/hが観測されたなら、その値が来年の3月11まで続くとして計算します。これは電卓でも計算できるので便利なのですが、発表ごとに予想積算被曝量が変わってしまいます。また採用する最新の観測線量の測定誤差などの影響を受けてしまう欠点があります。みなさん知っているように実際の放射線量は放射性物質の崩壊とある程度の拡散で少しずつ減衰していきます。このため、文科省の元になる積算被曝予測・・・(A)は減衰を考えたそれより少し高めの値が出てしまいます。また、文科省の計算予測の2つ目の仮定ですが、一日24時間のうち、8時間が野外で、16時間は木造建築の屋内にいることを前提にしています。野外は10割被曝ですが、屋内では6割の被曝にとどまるという評価をです。そのため、(A)の値に73%をかけた値を積算被曝予想として発表しています。 等サイトの数値は、予想線量は崩壊による減衰を考慮しており、また24時間野外にいたとしての被曝量になります。下の表に等サイトで発表している事故から1年間の予想被曝量と文科省が発表しているそれとの対比を載せておきます。生活条件を考慮している文科省の数値が少なめになっています。ただ、数値が不正確というわけではありません。当サイトで発表した値に0.73をかけると文科省発表の最新数値とほぼ一致します。

それと、年間被曝量予測を考える場合に、とても大切なことがあります。
日本人は平均して自然から年間1.2mSVの被曝を受けています。その内訳は約1/3が宇宙線や土壌からの外部被曝、
約1/3が内部被曝(空中のラドンなどが肺に入ることによって起こる)、そして残りの約1/3が食物からの被曝です。文科省なりここで発表している年間被曝予想というものはこの1/3の部分の外部被曝量に過ぎないということです。食物からの被曝については出荷規制などでそこまで急激には上がらないと思いますが、汚染地域では地面だけでなく空気も放射性物質のちりによって汚染されている危険があります。 そのため、汚染地では空気を吸い込んだときの内部被曝量が大幅に高くなる危険性があります。内部被曝の場合は外部被曝と違って、γ線だけでなくα線、β線の影響を受けますので、ガンマ線を出すI-131、Cs-134、Cs-137以外にも影響を与える核種が増えてきます。土壌の放射能調査(5/31現在)によると量はそう多くありませんが、少なくともTe-129m、Cs-136、Ag-110m、Sr-89、Sr-90などの核種が見つかっています。これらは主にβ線を出しますので(Ag-110m以外)、内部被曝を評価するときにはこれらの核種も考える必要があります。現在、内部被曝量の評価について正確な情報が欠如している状況にあると思います。仮に年間外部被曝推定が仮に5mSVであっても、内部被曝を考えるとこの数値がさらに上がる可能性があるということです。
地点 文科省4/24発表(mSV) 文科省5/11発表(mSV) 当サイト数値(B)(mSV) B×0.73(文科省の生活前提にあわせる。)*カッコの中は積算データからの数値
2 10.6 12.9 15.9 11.6
7 3.3 4.1 5.3(4.4) 3.9(3.2)
15 3.6 4.4 5.3(6.4) 3.9(4.7)
31

48.2

43.4 70.2(60.2) 51.2(43.9)
32 110.2 105.3 162.8(141.1) 118.8(102.9)
33 61.7 57.1 104.5(80.3) 76.2(58.4)
36 19.6 16.8 23.1 16.8
37 21.2 21.7 21.6 15.8
61

26.3

23.5 30.8 22.5
62 34.8 29.0 39.2 28.6
63 10.0 9.0 13.4 9.8
83 235.4 219.5 313.6 229
         

inserted by FC2 system